2023年9月23日と10月7日 外国人児童生徒等教育にかかわる方を対象に、オンラインで「基礎から学ぼう」シリーズを実施しました。
2023年11月02日
「基礎から学ぼう」シリーズは、外国人児童生徒等教育にかかわる方、かかわりたいとお考えの方に向けて外国人児童生徒等教育にかかわる4つの項目を取り上げ、基礎から解説する研修会として2021年度から、愛知教育大学日本語教育支援センターが主催し今回で3回目となります。
はじめに、日本語教育支援センター長の杉浦慶一郎理事(連携?附属学校担当)から、「日本語支援が必要な児童生徒が増加する一方、研修の増加が追い付いていない現状がある中で、センターとして研修を行うことで外国人児童生徒支援に貢献したい」とあいさつがありました。
次いで、菅原雅枝准教授(日本語教育講座)から本研修の趣旨として、子どもたちの日本語指導をめぐって担当者の頻繁な異動などの課題がある中で、携わる全員が基本的な情報を有することが必要と考え実施していることの説明がありました。
9月23日(土)実施の第1講座では「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)」をテーマに、関西大学の伊澤明香先生からDLAの概要の説明と実施上のポイントについて解説をいただきました。子どもの「できた」という思いを引き出し、その子どものベストパフォーマンスを知ることが重要であるということを学びました。
同日の第2講座では「特別の教育課程による日本語指導と個別の指導計画」をテーマに、豊橋市教育委員会の築樋博子先生から特別の教育課程の位置づけなどについて解説をいただいた後に、個別の指導計画の記述方法について、特別の教育課程は在籍学級における指導につなげるものであり、次の指導者や担任、教科担任などと共有するために、成果や課題のみならず単元や手だてを記載することが有効であるという説明をいただきました。
10月7日(土)実施の第3講座では「初期日本語指導」をテーマに、横浜市立南吉田小学校で初期日本語指導を担当されている藤川美穂先生からお話いただきました。発達の途上にある子どもへの日本語指導は大人への指導とは異なり、発達段階にあわせた指導をする必要があること、日常的な日本語表現の指導(サバイバル日本語)、日本語の基礎知識の指導(日本語基礎)、日本語と教科の「統合学習」は並行的に行われること、子どもたちの学習経験や文化的背景等を考慮した一人ひとりに応じた支援が重要であること等を説明いただきました。
続いて第4講座では「JSLカリキュラム概要 ―学習活動を通して、日本語で学ぶ力を育成する―」をテーマに京都市教育委員会の大菅佐妃子先生からお話しいただきました。JSLカリキュラムは教室での学習活動に日本語で参加するための力、すなわち「日本語で学ぶ」力を育成するための支援ツールであること、日本語の力が不十分の場合は授業に参加できないと思われがちだが、日本語の力にあわせて参加できるようにする、という考え方であることを説明いただきました。その後、JSLカリキュラムの組み立て方について日本語の目標の立て方や、「支援」の工夫、在籍学級とのつながりなど、ご自身の経験も含めながら具体的に説明いただきました。
講座後のアンケートからは、「在籍学級の立場から、日本語教室の指導に関して理解が深まりました」「担任の先生と教科のどこに重点目標をおくか、相談しながら支援していこうと思いました」「指導主事として、個別の指導計画について作成の意図を正しく伝えるとともに先生方が困らないようにアドバイスをする上でとても参考になりました」といったようにさまざまな立場の方に有益な研修となった様子が伺えました。
JSL...第2言語としての日本語の意味。
対話型アセスメント(DLA)...日常会話はできるが、教科学習に困難を感じている児童生徒を対象に開発された、言語能力測定ツールです。紙や鉛筆による、いわゆるペーパー?テストでは測れない文化的?言語的多様な背景を持つ年少者の言語能力を対話を通して測る支援付き評価法です。
(地域連携課 課長 古田紀子/地域連携係 係長 松本典江)