2021年3月18日 全学FD講演会「発達障害のある大学生への合理的配慮と卒業後に向けた支援」を開催
2021年03月24日
3月18日(木),教職キャリアセンター主催の全学FD講演会が開催され,信州大学の高橋知音教授に「発達障害のある大学生への合理的配慮と卒業後に向けた支援」についてお話いただき,オンライン配信を含めて約90人の教職員が参加しました。
発達障害とは,脳の働きにかかわる認知機能の障害のことで,障害のある学生は,学習面や対人関係,集団活動などに困難を抱えていることが多くあります。一方で,障害が多様で外見からは分からないことも多いため,周囲の理解が得られにくく,適切な配慮や支援を受けにくいことが課題となっています。今回の講演会は,大学の教職員として発達障害についての理解と支援に関する知識を深めることで,発達障害のある学生に大学入学後の早い段階から適切な支援を行うことを目的として実施されました。
はじめに,発達障害について理解するために,「限局性学習症(SLD)」「注意欠如?多動症(ADHD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」の特徴と支援策が紹介され,「彼らへの支援は,苦手なことをバイパス(迂回)することで才能を生かすことが大切。具体的には,授業の板書撮影や録音の許可,試験時間の延長などで状況を改善できることがある」と,教職員の理解と支援の必要性を伝えました。そのほかにも,ADHD?ASDの人が持つ傾向と強みについて説明があり,「障害で生じる社会的な不利を減らして,彼らの強みを生かすことがポイントである」として,スマホの機能やアプリを利用した工夫の方法や,周囲からの声掛けの仕方など具体的な支援策が紹介されました。
次に,「障害のある学生への合理的配慮」の定義として,「『合理的配慮』とは障害のある学生に特別甘い条件を提示したり,判断したりすることではなく,同じ条件で学習や試験に取り組むことができるように調整することである。また,基本的な条件として,教育の目的?内容?評価の本質(カリキュラムで習得を求めている能力や授業の受講,入学に必要とされる要件)を変えないことが大切」とお話がありました。そして,障害者として診断のある学生が,配慮を申し出た場合,教育機関として方策を検討することやその検討によって決定した事項を提供することが義務付けられており,組織全体で取り組むことが求められていることについて説明がありました。
最後に,発達障害のある学生による実習に対する配慮の例として,事前に実習先のルールを詳細に伝えることや,実習先担当者と丁寧な打ち合わせをすることなどが紹介されました。こうした配慮が必要である一方で「あくまで責任の主体は学生本人。学生が自身の強み,弱みを理解した上で,自身の権利や必要な支援を社会で主張できるようにならなくてはいけない」「はじめは『苦手なところもあるけど,君のいいところを生かしていく方法をみんなで考えていこう』,『苦手なことの調子はどう?大丈夫?』などの声掛けをすることからスタートしましょう」と参加者へ投げ掛け,講演を締めくくりました。
講演後の質疑応答では,「実際に学生への支援と配慮について,対応に迷った経験がある」や「実習先の状況によっては発達障害の学生の受入れが難しい。教員として学生?実習先とどのように向き合うべきか」といった教職員の声が聞かれました。
今回の講演会により,発達障害のある学生に対する合理的配慮と支援の必要性について改めて教職員の中で共有することができ,有意義な機会となりました。
(広報課 広報?渉外係 社本真里)