平成23年度概算要求基準(シーリング)で国立大学法人運営費交付金を削減対象としないことを求める緊急声明
2010年7月13日
国立大学法人愛知教育大学学長
松田 正久
政府は、「財政運営戦略」で平成23年度から平成25年度を対象とする「中期財政フレーム」を策定しました。これによれば、社会保障費、地方交付税交付金、人件費等の義務的経費を引いた政策的経費が、平成23年度マイナス8%になると推算されます。
国立大学運営費交付金は、法人化時点の2004年度から、毎年1%が減額され、この6年間では、全国立大学法人の運営費交付金は6.7%、830億円が削減されました。愛知教育大学では、基盤的経費である一般運営費交付金は2.7億円が削減され、2004年度の47.1億円から2010年度では44.4億円となっています。
この間、ほとんどの国立大学では、大学教員と事務職員の定年後の不補充での対応を余儀なくされ、愛知教育大学でも、不本意ながら、この間30人余の教職員の補充ができず、このことが教育研究環境を劣化させ、多くの国立大学で「負のスパイラル」と言われる状況を生み出しました。こうした状況にもかかわらず、愛知教育大学では、様々な工夫をしながら諸経費の節約に努め、教育研究の充実を最優先課題として運営してきました。こうした努力もあり、この3月の本学の教員養成課程卒業生の正規教員合格率は50%を超え、教員養成を目的とする愛知教育大学の役割を十分果たしていると考えています。
今年度は、「臨時的削減」で運営費交付金は前年度比100億円の減額となりましたが、法人化前に回復するとの方向に大きな期待感を持っていた矢先に、今回の「中期財政フレーム」では、「平成23年度からの3年間は『基礎的財政収支対象経費』について前年度を上回らないこととされ、巷間1兆円以上とも言われる社会保障関係経費の伸びを勘案すれば、いわゆる『政策的経費』は年率8%の減となります。大学の人件費を含む国立大学法人運営費交付金もその対象とされ、削減額は、単年度だけでも927億円(3年間の総額で約2,800億円)と、平成16年度から22年度の6年間の減額の総合計(830億円)を上回る、すさまじい削減」(7月7日国立大学協会声明)を求められることが予想され、疲弊した国立大学の現状にとどめを刺すに等しい事態となります。仮に、これが適用されれば、愛知教育大学では、約4億円の運営費交付金の削減に相当し、大学の存立そのものを覆す極めて深刻な事態となります。
私は愛知教育大学の学長として、未来に輝く子どもたちの教育に責任を負う優れた教員の養成を軸に社会で幅広く活躍する人材を養成することが愛知教育大学の使命と役割の全てであると考えています。教育界をはじめ地域の多くの方々からは本学に対して大きな期待が寄せられております。これに応える意味からも、私たちは、中央教育審議会にこの6月に諮問された「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」の審議を注視し、可能な改革には積極的に取り組み、国民の期待に応えうる質の高い教員の養成に取り組む決意を新たにしています。
国家財政の立て直しが急務であることは理解しつつも、「国家100年の大計」である教育、とりわけ高等教育への投資こそが、日本の未来を確かなものとして保障する最大の手立てであると私は確信をしています。運営費交付金は、学生に教育を保障するための基盤的経費として、国民の付託に応えるべく各国立大学が執行する重要な財源です。
国においては、国民の高等教育を受ける権利と機会を保障していくためにも、国立大学法人運営費交付金を8%削減の対象から除外され、国立大学の更なる充実を図っていただきますよう,強く要望いたします。
カテゴリ:ニュース|掲載日:2010年07月14日