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教員養成系大学における障害学生支援ブックレット
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名前 | 原 和大(31歳) 重度聴覚障害(主に手話使用等) |
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学歴 | 愛知教育大学 障害児教育教員養成課程卒業 |
職歴 | 愛知県立岡崎聾学校(教職暦9年) |
平成19年度に卒業するまでの4年間を愛知教育大学で過ごしました。現在は、県立聾学校の教諭として、子どもたちのやる気を引き出せた者勝ちの日々を楽しんでいます。こうした日々を実現できたのも、大学時代のさまざまな出会いはもちろん、情報保障によって「わかる講義」を受けることができたおかげでもあります。
在学時の情報保障は、ノート要約筆記と手話通訳、途中からパソコン要約筆記が加わっての3択でした。手話通訳は、予算により利用できるコマ数は限られていましたが、手話を中心に育ってきた私にとって、手話通訳による情報保障はとても有難かったです。そのなかでも忘れられないのが、「児童虐待」が主題の講義です。講師が涙ながらに虐待の現実を語り、それを手話通訳者が感情を込めて情緒豊かに通訳してくれました。そのおかげで、涙を流す他の受講生と同様に胸が熱くなったのを今でも覚えています。ノートテイクだったらまた違った受け止め方になっていたのだろうと思います。もちろん、すべて手話通訳がいいというわけではありません。それぞれの講義内容に応じて、情報保障方法の利面や特性を活かして利用しました。
ノート要約筆記のデメリット(支援者に挟まれて座る形態)から脱すべく、LAN ケーブルでつなぐことにより支援者と当事者が隔離した状態でも情報保障が可能なパソコン要約筆記へと進展できたことは大きな喜びでした。隔離でき自由の身になれたとはいえ、支援者とのコミュニケーションをたいせつにしようと心掛けてきたつもりです。支援者を手話サークルへと誘い、親しくなれたことも良い思い出です。
当時の情報保障については、改善と向上に努めつつも、これ以上望むことは特になかった気がします。しかし、心残りがひとつだけあります。大学4年になると、大学が企画する教員採用試験セミナーや集団討議練習などで賑わいます。このうちの集団討議の練習について、手話通訳を希望したものの、自主参加であることや予算の都合によりつけることはできませんでした。そのため、後輩の有志によりボランティアで手話通訳をしてくれました。しかしながら、手話技術の未熟さにより集団討議練習の通訳についていけず後輩が途中で泣きだしてしまうことがありました。未熟であることは承知のうえでお願いしたものの、たいへん申し訳ないことをしたなと猛省した出来事です。学内における講義以外の場面でも通訳を配置できるような環境であったらどんなに良かったか...と思うばかりです。
私が在学していたのは10年ほど前です。今では、IT技術も驚くほど進み、遠隔情報保障が行われている大学が増えていると聞いています。遠隔情報保障のメリットは大きいものだと想像できます。ですが、遠隔であることは当事者と支援者が互いに見えない状態になるともいえます。コーディネーターが行っている作業の多さ、多くの人の努力や協力によって成り立っていることを知っている当事者はどれほどいるのだろう。支援の質をあげるべく、自分たちで工夫をしたり、当事者と協力関係を築いたりと主体的に動く支援者はどれほどいるのだろう。表面だけで満足せず、支援の裏舞台をきちんと見つめ、互いに意見を出し合い、主体的に動くことをたいせつにしていってほしいです。このことは、大学卒業後の職場でも同様のことが求められます。そこでも自分の力が発揮できる環境を整えていく原動力となるように、この大学生活からできることをたいせつに、たいせつにしていってください。
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