第Ⅳ章 教員養成系大学における支援活動の紹介 第1節 北海道教育大学旭川キャンパス ※校章省略 1.学生への支援体制 近年、大学内でも少なくない発達障害およびその近接領域にある学生への対応が進められています。入学後の学生相談の場として旭川校では「学生なんでも相談室」と「保健管理センター」を設置しています。前者は学部生の気軽な相談の場という位置付けで、大学院生が相談を担当しています。後者は看護師と臨床心理士が心理面、健康面での相談を担当しています。しかしながら困っているが相談できないといった学生も存在し、大学側はそのニーズをいち早くとらえ早期対応へつなげる工夫が課題となっています。 (1)困難を抱えている学生の早期発見?早期対応 北海道教育大学では入学後の健康診断において、心理?健康に関わるアンケート調査を全学生にたいして実施しています。そのアンケート結果に基づき、いち早く学生のニーズをとらえ、必要に応じてその後の相談へつなげる取り組みも行われています。 また指導教員が学生の困り感にいち早く気づくことも重要と考えています。現在の大学教員の気づきを調査するため、旭川キャンパスでは平成27年、平成28年に指導学生を持つ大学教員を対象に「指導に特別な配慮を要する学生の実態調査」を実施しました。回答の得られた教員の約40%が指導学生の「対応に困難を感じている」と回答しています。また困難を感じる学生の様子としては「うつ症状」「不登校」「学生同士の対人関係」が多いという結果でした。この結果に基づき教職員の情報共有の場も設けられました。 (2)教職員への理解啓発 平成28年度は大学教員及び事務職員を対象に、発達障害の特性と関わり方に関する講義を開催しました。とくに発達障害特性が大学という比較的自由度の高い環境とぶつかった場合、不適応状態をもたらす可能性もあるといった解説を行いました。また学生対応をするうえでの留意点についても触れています。 2.特色ある取り組み 学部生が1200名規模の旭川キャンパスでは平成28年度から“学生支援コーディネーター”という職を保健管理センター内に設けました。 この職は大学教員が併任する形ではなく、新たに臨床心理士の資格を有した非常勤職員を採用する形を取っています。期待される役割としては、背景に発達障害特性がある学生への専門的な対応と、学生の対応に困難さを感じる教職員の相談窓口の2点にあります。保健管理センターには既存の臨床心理士がいますが、一般的な学生相談に加えて上記の2点についての役割も担うという点が大きく異なっています。 (1)教職員の相談窓口 平成28年度から学生支援コーディネーターが大学教員からの相談も請け負っています。12月時点で教職員からの相談ケース数は、既存の臨床心理士が0件にたいし、コーディネーターは 25件(延べ件数)と、教職員からの相談窓口として機能している様子が伺われます。具体的にはコンサルテーションという形で、学生との関わり方を教職員と一緒に考えていく取り組みが行われています。その他、発達障害あるいは精神疾患に関する教職員への説明、医療機関への橋渡しなどの業務を、教職員から依頼される形で実施しています。 (2)発達障害特性を考慮した関わりの重要性 学生からコーディネーターへの相談件数は平成28年度の12月時点で143件あり、そのなかで最も多かった相談内容は「自分?性格に関する内容」であり、58件でした。次いで「精神面」に関する内容が39件という結果でした(いずれも延べ件数)。これらの相談は本人の困り感として多様な主訴となっていますが、対応するうえでは発達上の特性を考慮したり、その特性に由来した二次障害の観点を持つ方が、その後の展開を考えやすいケースも多いようです。