コラム6 (発達障害のある学生) 名前: A(20代) 注意欠陥多動性障害、学習障害(書字) 卒業: 東京学芸大学大学院(修士)修了 職歴: NPO 法人職員 1.はじめに 現在は、発達障害等の困難を有する思春期?青年期の若者へピア?サポートを行う仕事をしています。日々、ダイナミックに成長?発達していく若者と関わることができ、充実した日々を過ごしています。発達障害のある者の有する困難?ニーズは多様です。本稿の内容はあくまで私個人の考えであることをご了承ください。 2.在学時、あってよかった支援 (1)ワープロソフトの使用 私には書字の困難があります。手先の不器用さから筆圧の調整や字画のバランスをとることがむずかしい他、漢字を思い出すことができないこと、似たイメージ?同音の漢字をまちがえて書いてしまうということがあります。大学院在学中は、学期末の筆記試験の際にワープロソフト使用の許可をいただいた他、大学院入試の際も、別室でノート PC を使用する配慮を受けました。私は書字に時間が掛かってしまうのですが、ワープロソフトを使用でき、助かりました。 (2)カウンセリング 私はスケジュール管理が苦手で、タスクを抱え込みすぎることがあります。大学院在学中は、学内の障がい学生支援室の講師の先生のカウンセリングを受け、タスクに優先順位をつけること等について助言をいただきました。所属している研究室のメンバーに相談に乗っていただくことも多かったのですが、支援室の先生からは違った視点から助言をいただくことができました。 3.在学時、あったらよかった支援 私は学部生のころは東京学芸大学ではない大学に所属していました。当時から配慮?支援を受けていたのですが、今、振り返ると課題もありました。学部在籍時からスケジュール管理は苦手だったのですが、当時の私は「事前に申請することで、提出物の期限を延ばしていただく」という支援を大学に求めていました。希望は認められ、多くの授業で配慮を受けて、必要な単位を取得することができましたが、「提出物を期限までに出す」という当たり前の経験を積むことが出来ず、結果として卒業後、苦労することになりました。 私は「発達障害だから提出物の期限を守らなくても良い」ということは基本的に許されないものと思っています。学部在籍時の私に必要だった支援は、「事前に申請することで、提出物の期限を延ばしていただく」ことでは無く、「提出物の期限を守れる工夫ができるような働きかけ」だったと思います。たとえばチューターのような方と相談するなかで、スケジュール管理に能動的に取り組む体験を積むことができれば、卒業後に苦労することは無かったかもしれません。 4.後輩と、その支援者へのメッセージ (1)発達障害当事者の学生の方へ 私たちが抱える困難の中には、障害特性に直接起因するもの、「経験不足」に起因するものがあると思います。前者だと考えていたことが実は後者であったということは少なくないのではないでしょうか。障害による困難は個と環境の相互作用によります。環境に働きかけるだけではなく自分で工夫できる余地は無いか、検討することもたいせつです。 (2)支援者の方へ 当事者の困難を軽減させる支援はありがたいですが、支援方法が適切かどうかを常に検討していただきたいと思います。本人の望む支援が必ずしも適切であるとは限りませんし、対処療法的な支援では課題の先延ばしになってしまい、将来的に本人が苦しむこともありえます。長期的に本人の利益になるような支援をしていただけるとありがたいです。