第2節 大学における合理的配慮の考え方 1.合理的配慮とは 大学で学ぶ障害のある学生にたいして提供すべき「合理的配慮」とは具体的にどのような内容を指すのでしょうか。 「合理的配慮」は、前節で述べた国連の障害者権利条約において用いられた用語であり、次のように定義されています。 障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。(障害者権利条約第二条) 定義の中に「必要かつ適当な変更及び調整」とありますが、これは大学が提供するさまざまなサービスが障害のある人にとって「社会的障壁」となっている場合に、それらを取り除くためになんらかの変更及び調整を行うことによって、障害のある人にたいする差別的な取扱いとならないよう配慮するという意味です。なお、そのような理由で行う「変更及び調整」は、「障害者に対する差別的取扱い」には当たりません。 2.合理的配慮の内容 合理的配慮が必要か否か、またその内容については、障害の種類や程度によって異なります。また同じ障害であっても、常に一定の配慮が有効なわけではなく、個々人にとって社会的障壁となる場面や状況ごとに必要な配慮の内容は異なります。つまり合理的配慮とは、多様かつ個別性の高いものといえます。 また、合理的配慮は、事業の目的?内容?機能の本質的な変更を求めるものではありません。たとえば、障害を理由に成績評価の基準を下げたり、卒業要件を変更したりすることは、合理的配慮には当たりません。 3.「加重な負担」の考え方 障害者差別解消法の条文には、「その実施に伴う負担が過重でないときは……必要かつ合理的な配慮をしなければならない」(第七条の 2)とあります。この「加重な負担」の判断に関わる視点としては、①個別の合理的配慮によって、事務?事業全体の目的?内容?機能を損なうか否か、②物理的?技術的制約、人的?体制上の制約の有無、③費用?負担の程度、④事務?事業規模、⑤財政?財務状況などがあります(文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針第 2 の 2(2))。 このように、「加重な負担」については、具体的場面や状況に応じて総合的?客観的に判断することが必要であり、障害のある本人との話し合いによる相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、対応方法を柔軟に検討していきます。 4.「意志の表明」と合理的配慮 障害者差別解消法には、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において……必要かつ合理的な配慮をしなければならない」(第七条の2)という記述があります。 つまり、合理的配慮とは、障害のある本人が社会的障壁にたいするなんらかの手立てを要望した場合に、その実施について検討を行うものです。ただし、本人からの意思の表明がない場合であっても、その人が社会的障壁の除去を必要としていることが明らかであれば、周囲の人たちが本人にたいして適切と思われる配慮を提案し、意志の表明を促すという視点もたいせつです。