第Ⅰ章 支援の考え方 第1節 障害者差別解消法 1.障害者差別解消法とは 平成18年12月に国連総会において採択された「障害者の権利に関する条約」の締結に向けて、日本では国内法制度の整備が急速に進められてきました。その結果、障害者基本法の一部改正を経て、平成25年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称:障害者差別解消法)が制定され、平成28年4月1日に施行されました。 障害者差別解消法では、国?地方公共団体等、および事業者が、障害のある人にたいして正当な理由なく、障害を理由とした不当な差別的取扱いをすることを禁止しています。さらに、国?地方公共団体等、および事業者の事務または事業において、障害のある人の権利利益を侵害することのないように合理的な配慮を提供することを求めています(国?地方公共団体等は法的義務、事業者は努力義務)。 2.対象 本法律の対象となる「障害者」は以下のように定義されています。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。 なお、上記の定義中にある「社会的障壁」とは、障害のある人が日常生活または社会生活を送るうえで障壁となるような事物、制度、慣行、観念などを指しており、たとえば、階段しか整備されていないために車いす利用者が目的の場所へ行けない、音声による説明しか提供されないために聴覚に障害のある人が情報を受け取れない、などが最もわかりやすい例です。 3.対応要領と対応指針 障害者差別解消法では、国の行政機関の長及び独立行政法人等にたいして、当該機関の職員が適切に対応するために必要な要領(対応要領)の策定を求めています(地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は努力義務)。また、主務大臣は、事業者が適切に対応するために必要な指針(対応指針)を定めることとされています。すなわち、国公立大学の職員は、個々の大学が定めた対応要領に従って、私立大学の職員は文部科学省が定めた対応指針に従って、教育?研究活動や事務業務等において、障害者差別の解消に努めることとなります。